「応天の門」平安朝きっての色男・在原業平と秀才・菅原道真が怪異に挑む《ネタバレあり》

コミック「応天の門」の1巻ネタバレと感想

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※この投稿は、2015年1月4日に別のブログに掲載した内容を修正したものです。

発売当初から気になってた「応天の門」を、や〜っと読むことができました!
自分の中で久しぶりにヒットしたマンガなので、紹介がてらまとめておきます。

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在原業平と菅原道真って誰だっけ?

日本史好きじゃなくても名前くらいは聞いたことがあると思います。

在原業平は歌人として有名で、百人一首に選ばれた「ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くゝるとは」は知っている人も多いはず。
そうです、競技かるたをテーマにした少女マンガのタイトルの由来にもなった和歌です。

業平は天皇の孫という高貴な血筋に生まれ、さらに「蔵人(くろうど)」という天皇の秘書的な役割を担い、和歌がウマくて顔がイイから女の人にはモテモテ、という非リアがうらやむフィクションのような存在です。

一方の菅原道真といえば、現在は学問の神さまとして信仰されてますね。非常に勉強熱心で仕事もできたので、天皇に重用されました。遣唐使制度の廃止は小学校で勉強した…はず…。

晩年は左遷先の太宰府で亡くなりますが、その後京都で災厄が相次いだことで「道真のたたり」と恐れられ、それを鎮めるために北野天満宮が建てられました。月日がたって、学問の神「天神さま」と広まっていたそうです。

ちなみに道真さんの和歌も、百人一首に選ばれています。(「このたびは 幣も取り敢へず 手向山 紅葉の錦 神のまにまに」)

業平と道真の関係性

天の門」は、朝廷イチのモテ男・在原業平と、朝廷イチの秀才・菅原道真がタッグを組んで、京の都を揺るがす怪異に挑む平安ミステリーコミックです。

実はこのマンガを読むまで知らなかったのですが、業平と道真って交流があったんですよね。
Wikipediaによると、

在原業平とは親交が深く、当時遊女(あそびめ)らで賑わった京都大山崎を、たびたび訪れている。

菅原道真 - Wikipedia

とのこと。
業平の方が20歳くらい年上だから、たぶん女遊びを教えたのは業平だろうな、とか思っちゃったり。(ごめんね、業平さん)

艶男業平、女遊びの帰りにひきこもり学生道真に出会う

ストーリーは、京の都で起こった女性の行方不明事件と、そのさなかの二人の出会いから始まります。

朝廷では藤原氏が今まさに権力を欲しいままにしようとしている中、事件が起きる。「鬼の仕業」だとも噂されるようになり、帝の不安を取り去ろうと、業平が事件解決の任にあたります。

業平は夜遊びの帰りに偶然出会った道真の、優れた観察眼と頭の回転の早さに気づき、なかば無理矢理に捜査に加わらせます。しかし「鬼」の正体に検討がついたところで、業平は「これ以上は深追いしない」と言い出す。証拠があるのに何故「鬼」を捕まえないのか、と反論する道真は業平に「学はあっても世を知らない」と言われてしまいます。

普段から「周りは無学で騒がしいバカばっかり」とこき下ろす道真が、「貴族こんちくしょう」と持てる知識をフル活用して真犯人を引きずり出す結末が爽快です。

平安版ホームズとワトソン

とにかく業平と道真のコンビがいい感じです。ホームズ&ワトソンもそうですが、テレビドラマ「相棒」の杉下右京と亀山薫みたいでもあり。なんしか、境遇も性格も違う二人がタッグを組んで事件解決に挑む様子が最大の魅力ですね。

平安時代が舞台と言っても、朝廷のドロドロがメインではなくて、京で起きる怪奇事件は鬼や妖(あやかし)の仕業じゃなくて実は人間がやってるんだよ、っていうのがテーマなので、そんなに難しい印象はないです。
ミステリーなのでシリアスな展開がほぼほぼですが、二人のやりとりにクスッとなったりもします。

道真と言えば、先にも書きましたが、晩年は太宰府に左遷されてしまいます。
このマンガを読んでると「頭はいいけど、よい人間関係を築くのはヘタなんだな」というのがよくわかりますね。遣唐使廃止も、周りが言い出せない雰囲気だったのに進言した、って何かで読んだ記憶が…。

作中の道真はまだ10代の学生なんですが、左遷のことを思うと「もっとうまく立ち回れよ!」って心配になっちゃいますね。

「応天の門」おすすめポイント

業平と道真のコンビが最大の魅力ですが、もひとつ、業平の「渋い男」の度合いがハンパねぇです。
道真が10代で、プラス20歳だとそれなりにオッサンですけど、懲りずに女遊びするチャラい一面に不釣り合いな渋さに☆5つあげたい。

さらにもう一つ、業平とのちの皇太后・藤原高子の恋愛関係がチラっと見えるのもいいです。(元カノですけど)

普段ミステリーとかサスペンスものはあまり読まないのですが、「平安が舞台のミステリーってどんなネタがあるのかな」という興味で読み進めています。歴史ものというより、やっぱりミステリーものなのかな。
あ、解説ページもあって作中の世界観を補足してくれてたりしますよ。勉強になってます。

この作品以前から作家さんのファンでもあるので、できるだけ長く読みたいなぁと思います。

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